今回は、法人を設立する際に知っておきたい合同会社についてご紹介します。
記事のポイント
◯合同会社とは
◯合同会社の「社員」とは
◯合同会社の役員報酬・役員賞与
◯合同会社のメリット
・設立費用・ランニングコストが株式会社より安い
・経営の自由度が高く、利益の配分も自由に決められる
・経営の自由度が高く、利益の配分も自由に決められる
◯合同会社のデメリット
・資金調達の範囲が限定される
・株式市場への上場ができない
・株式会社に比べて社会的信用度が劣る
・出資者同士の意見が対立した際の影響が大きい
◯合同会社に適した業種
▼合同会社とは
合同会社とは、「出資者」=「経営者」であり、出資したすべての社員に会社の決定権があります。 それに対し、株式会社は、「出資者」と「経営者」が異なる場合があり、出資者である「株主」に会社の決定権があります。
▼合同会社の「社員」とは
合同会社では、出資者のことを「社員」といい、業務のみ行う「従業員」とは区別されます。
「社員」の合同会社への入社には、下記の条件があります。
合同会社の現社員による加入の同意
定款の変更
新たな加入者による出資
「従業員」の入社には上記のような条件はありません。いつでも雇用できます。
さらに社員にも、「代表社員」「業務執行社員」「社員」という区別があります。
| 代表社員 | 業務執行社員 | 社員 | 従業員 |
出資 | する | する | する | しない |
代表権 | あり | なし | なし | なし |
経営 | する | する | しない (業務執行社員を定めた場合) | しない |
登記 | 必要 | 必要 | 不要 | 不要 |
株式会社でいうと | 代表取締役 | 取締役 | 株主 | 一般社員 |
社員が1名のみの場合は、その1名が代表社員です。
業務執行社員が1名のみの場合は、その1名が代表社員です。
▼合同会社の役員報酬・役員賞与
合同会社の代表社員や業務執行社員は、株式会社でいうと代表取締役や取締役といった「役員」に該当します。
合同会社の代表社員や業務執行社員が受け取る給与や賞与は、他の企業形態と同じく、「役員報酬」や「役員賞与」となり、「定期同額給与」や「事前確定届出給与」の規定にしたがって支給しなければなりません。
▼合同会社のメリット
①設立費用・ランニングコストが株式会社より安い
設立費用は、株式会社が約25万円~であるのに対して、合同会社は約10万円~と費用が抑えられます。
| 合同会社 | 株式会社 |
紙の定款用収入印紙代 (電子定款では不要) | 4万円 | 4万円 |
定款の謄本交付料 | 0円 | 約2千円(1枚250円) |
定款の認証手数料 | 0円 | 5万円 |
登録免許税 | 6万円 または、資本金額×0.7%のうち高い方 | 15万円 または、資本金額×0.7%のうち高い方 |
また、株式会社には2年間(非公開の株式会社は最長10年)という役員の任期があり、再任する場合や新たに就任する場合の登記費用(資本金1億円以下の会社は1万円、1億円を超える場合は3万円)がかかりますが、合同会社には役員の任期がないため、役員の氏名や役職が変わらない限り、登記手続きは不要です。
②法人の節税メリットが受けられる
合同会社は法人であるため、経営者や家族への給与・一定の賞与などの費用も経費として計上することができたり、一定税率(※)を適用できたりという、法人の節税メリットが受けられます。
※個人事業主の所得税が累進課税(所得が多いほど税率が上がる)なのに対し、法人税は所得が800万円以下なら15%、800万円超なら23.2%(資本金が1億円超の場合は一律23.2%)と一定の税率となります。
③経営の自由度が高く、利益の配分も自由に決められる
合同会社は、「出資者」=「経営者」であるので、定款に定めることで組織の設計を自由に規定できます。
また、合同会社は定款に定めることで出資者以外にも利益を分配をすることも可能です。
株式会社の場合、出資者への利益配分は必ず出資者の出資比率と同じ割合にしなければなりません。
▼合同会社のデメリット
①資金調達の範囲が限定される
合同会社には、株式の増資による資金調達ができないため、国や自治体の補助金や助成金、借入(融資)が調達の中心となります。
②株式市場への上場ができない
合同会社は、株式市場へ上場することにより事業拡大を目指すことは出来ません。
③株式会社に比べて社会的信用度が劣る
合同会社は、決算公告(※)の義務がなく、小規模で閉鎖的な会社形態が中心であるため、株式会社に比べて信頼性が低く、認知度が低い傾向があるため、社会的信用度は株式会社に比べると劣ります。
※株式会社の場合、その規模に関係なく決算公告を行うことが「義務」とされています。
④出資者同士の意見が対立した際の影響が大きい
合同会社は、出資比率に関係なく1人1票の議決権をもって意思決定を行うため、出資者である社員同士で意見の対立が起こる可能性があります。
▼合同会社に適した業種
合同会社は、経営の自由度の高さや利益分配などが自由に行えることから、社員数が少数のスモールビジネスの経営には適しているといえます。
また、会社形態が問題になりにくい、一般消費者向けのビジネスにも向いているといえます。
今回は、法人を設立する際に知っておきたい合同会社についてご紹介しました。
会社の設立を検討される際には、株式会社と合同会社のどちらが向いているのか、その違いをよく理解して選択することが重要です。
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